2014年8月12日火曜日

リューダー・ヤッヘンス医学博士:アトピー性皮膚炎の理解とアントロポゾフィー医療入門 4


通常私たちは専門家でもない限り、あまり深く皮膚について考えることは無い。しかしアントロポゾフィー医療の観点から皮膚について考察する時、これまで私たちが思い描いていた皮膚についての表象とは全く違う深度を持った皮膚理解——人間理解——に導かれる。2014年8月29日—31日にかけて徳島で行なわれる『渦:混沌の創造性』の為に来四されるリューダー・ヤッヘンス医学博士の著書『アトピー性皮膚炎の理解とアントロポゾフィー医療入門』から、「公開講演I アトピー性皮膚炎の理解と病気の治療」を連載でご紹介したい。また8月の一連の講座では、様々な催しが企画されている。こちらも奮ってご参加頂きたい。


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発症しやすい部位と発症しやすい人間の気質

アトピー性皮膚炎の症状が、体のどの部位に最も顕著に見られるのかを考察することも、非常に興味深いものです。

アトピー性皮膚炎の発疹は、目の周囲に始まって顔全体に広がります。或いは喉の周り、襟元、頸筋にも頻繁に見られます。両肩の付近に見られることもありますし、そのまま下へ降りて二の腕、肘、前腕、手の平へと広がっていることもあります。発疹が顕著に現れるこれらの部位の特徴を挙げるとすれば、それは既に述べた神経感覚系の組織の中心と、その周囲であるということが出来ます。こうした観点を最も顕著に表す症例は、目の周りの発疹です。言うまでもなく目は我々にとって極めて重要な感覚器官であり、また現代社会に於いて非常に酷使されている感覚器官でもあります。その周囲に現れる発疹は、ですから多くの場合ストレス性の発疹なのです。

さて、ここで私が研修医時代に知り合った、目の周囲に発疹を持つ患者さんについて少し話してみたいと思います。その病院では毎朝十時に定期回診が行われていたのですが、その患者さんは私が病室に行っても未だ起きてはおらず、深い眠りの中にありました。それから、その翌日も翌々日も、その患者さんは朝十時に病室を訪ねても眠っていたのです。結局、私は四日目の朝になって初めてその患者さんと話しをすることが出来ました。詰まり、その時点で朝十時の回診以前に目覚めることが出来るほど、回復していたということです。ですから、目の周りの発疹は随分と快方に向かっていました。そして、その患者さんの話によると彼は大学生で、日中は大学で電気工学を学び、夜になると学費を稼ぐためにタクシーの運転手として働いていたそうなのです。これが正に、目の周りに発疹を持つ人の典型的な症例と言えます。

今度は肘に現れる発疹について考察してみましょう。アトピー性皮膚炎の発疹は、往々にして肘の内側、詰まり「伸ばす側」ではなく、「折り曲げる側」に現われます。恐らく皆様は、肘の内側の皮膚が非常に繊細で敏感であるということをご存じだと思います。ですから、例えば新しく買った化粧品が自分の肌に合っているかどうかを確認する為に、この肘の内側の皮膚で試してみることは非常に理に適ったことなのです。またこの肘の内側の皮膚の下には、非常に太い血管と神経と、筋肉の腱(筋)が通っています。血液検査や輸血をされたことがある方は、ここに見られる太い血管がどれだけ採血に適しているかをご存じだと思います。ですから、このように腕の中で特に大切な組織が集中する肘の内側付近の皮膚が極めて繊細で敏感に作られていることは、至極当然のことだと言えます。そして、正にこうした敏感な部位に——この過敏にすら成り得る傾向を持った部位に——アトピー性皮膚炎の発疹は現れるのです。

今度は手の平に現れる発疹について考えてみましょう。触覚を可能にする感覚器官として、指先の皮膚の感覚以上に繊細で正確なものは有りません。触覚を通して世界を知覚しようとするとき、我々は必ず指先を通して体験しようとします。例えば腹部の皮膚にも触覚は存在しますが、我々はこれを通して何かに触れようとは思いません。そして、このように手の平に於いては神経感覚系の活動が活発であるが故に、そこには——人間の頭部と同様に——強い形成力が働いているのです。手の平には人間の体の他の部位よりも強い形成力が働いている証拠として、「指紋」を挙げることが出来ます。指紋の造形は極めて多彩で人によって異なり、二つとして同じ模様が在りません。丁度、顔にその人の個性が浮き彫りになっているように、指紋にもまた、その人の個性が反映されているのです。ですから——この世界に同じ人間が二人存在しないのと同様に——この世界に同じ指紋を持つ人間は存在しないのです。ですから指紋という情報は、犯罪捜査に於いて非常に重要な意味を持っているのです。通常我々が顔を見て個々の人間を識別・特定するように、犯罪捜査に於いては犯行現場に残された指紋によって人間を識別・特定するのです。

このような観点から、仮に我々が人間の体の部位を上と下に分類するならば、手の平は明確に上部の人間に属していることが分ります。手の平は腕の末端、直立した人間の形姿に於いては腰よりも下の高さに位置しますが、本質的に手の平は頭部と同じ上部の人間に属するのです。それ故、人間の上部組織に好んで現れるアトピー性皮膚炎が手の平に現れることもまた、当然のことなのです。

今度はアトピー性皮膚炎の傾向を持っている人、或いは既に発症している人に多く見られる特徴的な性格や人格、気質について考察してみたいと思います。

このような人は非常に目覚めた意識を持っていて、外界からの働き掛けに対して素早く反応することが出来ます。彼らは例えばコンピューターのような、複雑で誰もが扱いに苦労する機械を、難なく使いこなすことが出来ます。彼らは非常に知能が高くて賢く、例えば旅行のような時に自分がとる行動についての極めて明確で詳細な計画を立てることが出来、それを実際に行動に移すことが出来ます。逆に、自分で意図したのでは無い形で自分の身に何かが起こることを嫌います。一日自由に使えると思っていた日曜日に遣って来る、急な来客などがその良い例です。或いはこのような人間は、学校の授業などで過去に得た抽象的な知識を、現実の世界で応用する能力も持っています。

ところが、このように極端に神経感覚系の活動を要求する傾向は、人間を単に繊細や敏感にするだけではなく、過敏にしてしまう可能性も持っているのです。こうして人間の皮膚は敏感になるだけではなく、皮膚そのものが薄くて力無いものになってしまい、またその内面はストレスに対する耐性と抵抗力を失うのです。人体の中で手足や胸の部分を無視して頭ばかりを酷使する、いわば「頭でっかちな」人間になりがちで、例えば芸術のように空想力(ファンタジー)が要求される領域を難しく感じるかもしれません。場合によっては、こうした人間が芸術家であることもまた考えられますが、その人が生み出す芸術作品は非常に繊細で、きめ細やかなものであると想像出来ます。彼は細く尖った鉛筆で精緻な素描をしても、パレットいっぱいに広げた色彩を縦横無尽にカンバスに塗りたくるということはしない筈です。

私は、以上のような事実を以ってアトピー性皮膚炎を発症する人間の性格や気質を批判したいのではありません。そうではなく我々の目的は、飽くまでもこのような特徴的な例を以ってアトピー性皮膚炎という病気の本質と、その人間全体との関係性を明確にしたいのです。冒頭に述べましたように、現代の西洋医学に於いて皮膚という組織は人間全体から殆ど切り離されています。ですから、私はここで人間を全体として見詰めるアントロポゾフィー医学に於いては、患者の人格や気質なども診察に於いて考察の対象となる、ということを述べたいのです。少し余談にはなってしまいますが、これまで述べてきたような性格の持ち主はアトピー性皮膚炎を発症し易い傾向を持っていますが、全く別の疾病に関しては逆に発症しにくい傾向を持っています(註5)。換言するならば、これまでに述べてきたような性格とは全く正反対の性格を持っている人は、確かにアトピー性皮膚炎からは遠い位置に居るかも知れませんが、それとは全く別の病気には非常に近い位置にいるかもしれないのです。

さて、アトピー性皮膚炎を発症する傾向を持った人間に於ける魂の活動は、人体の頭部付近に於いてのみ活発です。ですから逆に頭部以外の組織に於ける活動は限定され、低下しているのです。こうして例えば腹部での魂の活動が低下することで、消化機能の低下という問題が生じます(但し、代謝系の組織の中で魂は「眠りの意識の中で」活動しているため、我々はそれを意識することが出来ません)。詰まり、そこでは消化に於ける魂の活動が活発でない為に、消化液の分泌が充分に行われていないのです。そして消化機能が低下することで特に蛋白質の分解が然るべき形で行われなくなります。何故なら蛋白質は、消化することが最も困難な栄養素だからです。世の中には様々な食物アレルギーが存在しますが、その大半は蛋白質に原因があります。消化に於ける魂の活動の低下が消化機能を低下させ、それが更にアレルギーなどの原因にもなるのです。

(続く)

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  • 5 本書「集中講座Ⅴ 質疑応答」を参照。

リューダー・ヤッヘンス医学博士(皮膚科医)
1951年ドイツ・ブレーメン生まれ。キールとゲッティンゲンの大学で医学を専攻し、卒業後、1984年から皮膚科医師としての活動を開始。1992年に南ドイツ・アルゴイ地方のシュティーフェンホーフェンにクリストフォールス診療所を設立。1993年からアントロポゾフィー皮膚科学会を主宰。スイス・アーレムハイムの癌専門病院ルーカス・クリニックでの医学ゼミナールやドイツ・シュトゥットゥガルト近郊の総合病院フィルダー・クリニック、そしてWELEDAWALAといった製薬会社などにおいて、ヤッヘンス氏は指導的立場にあり、診療所が休診である週末の殆どが、各地での講演やゼミナールで埋め尽くされている。地元ヴァンゲンのアントロポゾフィー協会では精神科学自由大学の分野などで重要な課題を担っている。
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