
2013年に初めて入間カイ氏にお会いしたとき、颯爽とバッグからiPadを取り出し、iPhoneで会話する姿は、——電子デヴァイスなんて似ても似つかない——シュタイナー教育、幼稚園園長の入間氏のイメージを壊された思いがして、驚きを感じたのを覚えている。電子デヴァイスの新しい「読書体験」について、日常生活の中でiPad、iPhoneを使用する入間氏に伺った。
Interviewer: Yuta Takahashi
入間カイ(入間):実はiPadでiBooksを読み始めたのはごく最近の事で、それまでのiPadやiPhoneでは、iBooksというアプリにPDFデータを入れて保存するだけでした。実際に電子書籍を購入したのは、いとうせいこうさんの『想像ラジオ』という震災後の文学や、リサ・ランドールという米国の理論物理学者の『宇宙の扉をノックする』という本の英語版をダウンロードしたのが最初でした。使ってみると、線を引いたり、付箋を付けたり、かなり使い勝手がいいと感じています。昔の古典など、無料でダウンロードできる資料もたくさんありますね。
アメリカの哲学者マンリー・P・ホールが書いたSecret Teachings of All Agesという、古代の秘儀から中世、近代、現代にいたる秘密結社や神秘哲学を網羅した大部の著作があるんです。日本語訳では人文書院から4〜5巻のシリーズで出ていたと思いますが、それも原書だと結構安価でiBooksで入手できるんですね。いままでは、そういった資料を持ち歩くことは難しかったわけですが、そういうのがiPadに入るんですよ。そういう手軽さはやはり貴重だと思います。
——カイさんに初めて電子書籍出版のお話しをした時、すぐに興味を示していただきましたが、まだその時にはご活用されていなかったという事ですか?
入間:「自分が活用しているから興味があった」というよりも、若い世代の方たちが、そういった「新しい動き」をしているということに肯定的な印象がすごくあって、それが嬉しかったのだと思います。
——実はその後に、iBooks出版契約の為のアメリカ側とのやり取りも、カイさんに電話での手続きを手伝って頂いて。そのおかげで電子書籍を出版できているという経緯がある訳ですが、その節は本当にお世話になりました。
入間:ぼくのほうにも、それだけ思い入れがあったということですね。iBooksの話を聞いて嬉しかった理由として、これまでコンタクトできていなかった人たちとも繋がれるような予感があるんですね。実際的な所でいえば、例えばリンクを貼るだけで人に知らせる事も出来るし、その「軽さ」がすごく便利だと思っています。電子書籍になるからこそ広がる読者層があると思います。もう一つは、「自分たちも変われる」というか。アントロポゾフィーのなかから新しい動きを起こしていくうえでは、iPadや電子書籍のような新しいメディアをポジティヴに見ていくことにも意味があると思います。
——カイさんからiBooksで出版したい本のお話もいろいろと頂いています。今後、iBooksとどのような関係を築いていきたいと思われていますか?
入間:昨年末に成立した「特定秘密保護法」が、実際にどういう形で私たちの生活を妨げることになるのか、まだ見えませんよね。実際には、大したことにはならずに済むかもしれないし、本当に大変な事態になっていくのかもしれない。ただ、思うのは、原発事故もそうですけれども、いろいろな人が警鐘を鳴らしている一方で、大多数の人々はなんとなくそれを素通りしていて、やはり信じられないほど大変な悲惨な事態になってしまう。そのときになって、「ああ、こんな事態になっちゃったのか」というのは本当にやりきれないですね。昨年末、秘密保護法の成立を受けて、内田樹さん(哲学研究者)という方がtwitterで「この法律が施行されるまでの一年間に、言いたいことはすべて言っておいたほうがいい」って発言されていたんです。それが結構、ぼくの中では大きくて。ですから「紙」ベースだと出版までに時間がかかったりしますけれども、iBooksで「今、本当に言わなければならないと思っていること」をWEBの「スピード感」とともに表現していくことができれば、と思っています。
——そうですね。僕も一読者としても、作り手としても、iBooksでの本の充実を期待しています。今日はありがとうございました。
入間:ありがとうございました。



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