2014年1月4日土曜日

幸福——全国民の自己実現の為のソーシャル・フィールドをサポートするブータン王国の国民総幸福指数(BNG)

"BHUTAN" Foto: Christopher Michel









文:吉田恵美
Text : Emi Yoshida
ブータン王国の「全国民の幸福研究所」代表、ト・ハ・ヴァン(元オイリュトミー療法士、ヴァルドルフ教師、治療教育者)の講演を昨年7月にベルリンで聞く機会がありました。ブータン王国は2008年に国の目標を国民総生産(GNP)から、国民総幸福指数(BNG)に切り替えた世界初の国です。国家レベルで意識改革を実現している希望あふれる講演を週間ゲーテアヌムに掲載された記事と合わせ要約しました。

ブータン王国の国民総幸福指数のためのアンケートは次のようなものです。

  1. 心の健康:人生をどう感じていますか? 肉体的、心的、精神的な生活状況にどれだけ満足していますか?
  2. 生活水準:あなたの望みや目標を実現できますか? 経済的な不安はありますか? 収入は公正に分配されていると思いすますか?(不均等に資産が分配されているほど、人は不幸です——富豪にとっても)
  3. 良い政府:国民は政治に積極的に参加していますか? 自由が支配していますか? 政府は腐敗していませんか?
  4. 健康:昨年何日間病気をしましたか? 体調はどうですか?(ブータン王国の医療費は無料です)
  5. 教育:昨年の就学率は? 何人の生徒が試験に合格し、大学を終了しましたか? 読み書きができますか?(ブータンでは5%以下です)
  6. 社会生活のインテンショーン:家族と何時間過ごしますか? スポーツ、カルチャー協会の集まりはありますか?
  7. 文化の多様性:文化的なアイデンティティは発達しましたか? 伝統を学び、実践していますか? 文化的催し物に積極的に参加していますか?
  8. 時間分配:「仕事と生活のバランス」はとれていますか? 家事、家族、趣味のためにどれだけ時間を使いますか? 他の人のために(ボランティア)どれだけ時間使いますか?
  9. エコロジーの多様性:種の多様性をどのように考えていますか?人類は環境に責任を持っていますか?(ブータン王国では、2020年までに100%自然農法への転換を義務付けています)


ブータン王国は、人口70万人の独立国です。4代目の国王の17歳の時のヴィジョンにこの哲学の基礎があります。インド旅行の途上でジャーナリストが、ブータンの国民総生産の低さについて触れたとき、国王は突然国民総幸福率の重要性を説いたそうです。40年来ブータン大国を導いている哲学は、発展の中心に人間があり、その人にとって最も重要な事を実現できる可能性を与えることが幸福であるというものです。

ヴェトナム外交官の子供としてヴェトナム戦争をパリで体験したヴァンさんは、18歳の時インド、チベットの旅で「内的変容をどのようにソーシャルな変容に結びつけるか?」という問題意識が生まれす。医学を学ぶためにシュトラースブルクへの途上でスイスの友人を訪ね、オイリュトミー療法の場に居合わせ、その後立ち寄ったドルナッハが彼の人生を変えました。1時間の予定が、オイリュトミー、オイリュトミー療法を学ぶことになります。そして内的・ソーシャル革新のために、次の世代を育てる必要性を実感し、ヴァルドルフ教育に進み、更に家族と共にキャンプヒル共同体で治療教育者として働き生活しました。その後、赤十字社で被災地、戦地で働く人々の養成に当たり、ブータン王国での「全国民の幸福研究所」設立の際、所長に要請されました。


"ブータン王国の祈りの旗" Foto: Michael Foley



1970年代以降、人類は地球が供給する以上の資源を需要するようになりました。エコロジー危機は、経済・モラルの危機でもあります。30億人以上が一日2.5ドル以下で生活しています。そして、世界人口の40%が5%の富を、20%が75%の資源を需要し、日々2万2千人の子供たちが餓死しています。人類はこれまでになく富み、分配が信じられないほど不公平状況にあります。そして、毎年1億人の自殺者があります。問題の核心は、収入が多いほど良い、という経済組織にあります。その影に収入の増加が幸福につながるという、イリュージョンがあります。人生に意味、幸福と満足感を与えるものは、数字で表すことができません。

ブータン王国は、国の目標を国民総生産(GNP)から、国民総幸福指数(BNG)に切り替えた最初の国です。内的改革なしに、ソーシャル改革はありえないということを新たに考えるべきです。私達が生活しているシステムは、私達の思考、感情、行動のプロジェクトです。つまり、外側に反転したわれわれの内面生活なのです。仏教の思想に基づく幸福は、他の人々のために奉仕し、自然と調和して生活するときに感じられるものです。地球上の全生命存在は、相互作用しています。自己の幸福だけではなく、他の人々、全生命存在のことを共に感じるときに共存、幸福が可能になります。それは、私達が自己の叡智と真の本質を実現できる時にのみ具体化することができるものです。「国民総幸福」は、自己実現を援助するソーシャル・フィールドを創ることです。それは、内的・社会的・エコロジー的な規模のものです。現在、ブータン大国の90%の国民は、収入の10%を寄付しています。(工業国では0.5%以下です)

アメリカでもこのシステムを実現したいという州がでてきました。時は熟しています。多くの人々は、社会改革が意識の革命にかかっていることを理解しています。私達は、発達段階で量子飛躍を目前にしています。現状のままでは先に進めないので、いずれにせよ変動は訪れます。今や、小さな変化が問題なのではなくて、意識改革によって変化が成就されるかどうかにかかっています。

吉田恵美(オイリュトミー療法修士 ミュンヘン在住)
1960年宮城・石巻生まれ 青山学院女子短期大学臨床心理学専攻 1986年ミュンヘン・オイリュトミー学校入学 1989年ディプロム取得 1994年障害を持つ児童の為のアウグスブルク・シュタイナー学校の創立に関わり、その当時から同校で治癒オイリュトミーと一般オイリュトミーを担当 1996年からはミュンヘン・アレフ・アンサンブルのメンバーとしてヨーロッパ各国で公演 2007年春の国際オイリュトミー大会ではゲーテアヌム・大ホールにてシュタイナー・フォルムによるソロ音楽オイリュトミーを公演し大好評を博す 2008年春にゲーテアヌムで開催された第1回オイリュトミー療法士国際会議に於いては講師を務める 2012年秋、ボン近郊アラヌス大学にてオイリュトミー療法・修士号を取得 現在ミュンヘン・アントロポゾフィー協会理事 2006年ドイツ国籍取得
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