2012年12月10日月曜日

【レポート】スイス・フランス・ドイツを巡るヨーロッパ理事研修旅行を振り返って



2011年3月11日、四国アントロポゾフィークライスの当時の理事会は研修旅行によりヨーロッパ滞在中で、現地時間同日の昼過ぎにミュンヘンの地下鉄にて、見ず知らずの乗客から大震災の一報を聞かされました。翌日、クライス理事会は震災の影響で大混乱だったミュンヘン空港から帰国の途に着き、再び日本の地を踏んだのは1号機の水素爆発の後でした。

このような状況から、研修旅行での体験報告は長らく日の目を見ることは有りませんでしたが、震災から二年が過ぎようとしている今、ルドルフ・シュタイナーの生誕150周年に合わせて、クライス理事会がゲーテアヌムの建つスイスを始めとしてフランス、ドイツの各地を回った研修旅行の体験を、ここで報告したいと思います。


この研修旅行の「正規日程」は3月4日から始まり、理事は各自の予定に合わせて現地入りをしました。先ずドルナッハでシュタイナーの設計による多くの建築を見て、ゲーテアヌムの理事とも面会しました。それからフランスのイーゼンハイムの祭壇画やロンシャン礼拝堂を見た後にドイツ入りをし、吉田夫妻、ヤッヘンス氏、デーブス氏など、これまでに四国で開催した講座でお世話になった人々に会いながら、ドイツ各地を巡回していた「シュタイナーの宇宙」という展覧会を鑑賞したり製薬会社ヴァラの工場見学をしたりしました。そして既に述べたように帰国の前日、ミュンヘン観光をしている最中に日本の惨状を耳にしたのです。


以下は四国アントロポゾフィークライスの理事である、林 明子さんの体験報告です:


私がシュタイナーに出会ったのは、13年程前の事でした。
その12年後にスイスの普遍アントロポゾフィー協会(ゲーテアヌム)に行く事になるとは思いも拠らず、その当時の私にとって西洋は憧れはありながらも遠く夢のような所でした。

今回の旅行の大きな目的の一つに、クライス創立からずっとお世話になっている吉田和彦さんが吉田恵美さんとラインハルド・ペンツェルさんと作られているアレフアンサンブルが、シュタイナー生誕150周年に合わせて行うゲーテアヌムでのオイリュトミー公演の鑑賞がありました。私は小畑奈穂子さんと共に研修旅行に参加した六名の内で最後に現地入りをし、ほかの理事たちに合流してアレフアンサンブルの公演に行きました。これまでにオイリュトミー公演は見たことがありましたが、スポットライトを使っての舞台での公演は初めてでした。音楽、動き、色彩など目に見え、耳に聞こえるもの、特に今回初めて見た、ライトの光の色によってオイリュトミストの服の色までも様々に変わって見える様は、時差ぼけで半分寝ている状態だった私には正に夢のように美しく、またその公演の中での激しさに目の覚める場面もあり、素晴らしいものでした。そして初めてのゲーテアヌムで、その場に流れる真剣な雰囲気を強く感じ、その中にいられた事も幸せでした。




また、このオイリュトミー公演の会場への行きの道で初めて直接見たゲーテアヌムは、コンクリートでできているにも拘わらず生き物のようにも見え、その中に入れるのがとても楽しみでした。その日はゲーテアヌムの正面入り口から入って、アレフアンサンブルの公演が行われるホールに行き、鑑賞の後は公演の打ち上げが行われていた楽屋裏に案内して頂き、その晩の公演に出演されていた方々と一緒のお祝いの席につかせて頂き、楽しい時間を過ごして宿に帰りました。











オイリュトミー公演を見た次の日にゲーテアヌムの見学したのですが、それは舞台裏や楽屋、屋根裏などを巡るガイドさんのいるツアーでした。先ずは正面の入り口からではなく、ゲーテアヌムに熱を送るボイラーのある建物(ハイツハウス)から、その熱を送る管が配置されている地下トンネルを通って入り、大ホールの天井裏に回りました。




吊り下げられた巨大な天井の緻密な構造を見たり、裏方さんの仕事場で仕事がどのように行われているのかなどを聞かせて頂いたりしている中で、特に北側の階段は未だ仕上がっていない所もあり驚いたのですが、その理由が資金が足りないとのお話で、外側から見た華やかさだけでない内側の苦労は私たちのクライスと同じだと感じ、ここにおいても培う事の一端を垣間見た思いでした。




そして今回の旅行では普遍アントロポゾフィー協会の建物としてのゲーテアヌムや、キリスト者共同体の建物、スイスとドイツの教会、そして高橋祐太さんの希望で見られたフランスのロンシャン礼拝堂と、古いものから新しいものまでいろいろな建築が見られましたが、その中に入るとそれぞれの建築が人に与えるもの、そこに集う方の求めるものの違いを感じた事でした。古い落ち着いた感じの街並みの中に点在する古い教会、大きく重厚な教会の中では敬虔な気持ちになりましたが、息が詰まる思いもしました。










また街の中で最も心に残っているのは、帰り支度だけの最終日の前日に行った教会でした。教会の塔の階段を登りつめた頃、鳴り始めた鐘の音は始め一つだったのに、あちらこちらの鐘の音が重なり、その大きな響きに包まれたのは、非常に印象的でした。毎日このような響きを聞く事は精神にも少なからず影響が有るだろうと思いました。日本でも除夜の鐘をあちらこちらのお寺でつきますが、お正月のあの空気の清められた感じは、人間の鐘をつくという祈りの行為に響きが応えてくれて、生み出されているところもあるのではないかと思わされました。





私は今回スイスやドイツに行くまで、クライスで講座をしてくださった外国の講師の方はもうお会いする事はない遠い存在のように感じていたところがありました。しかし吉田和彦さん、吉田恵美さん、ヤッヘンス先生、ジョイア・ファルクさん、ヨハネス・ファルクさん、そしてシュトゥットガルトで四国での講座の続きのお話をしてくださったデーブスさんと、現地で再会することが出来ました。初めてお会い出来た方々も含めて、その方々の生活の場でお会いすることが出来て、空気感や建物や植物など私の住む高知との違いも感じましたが、人間の営みとしては同じだと思う事も感じることが出来、親しみも増しました。デーブスさんが言われた、住む場所は離れていても同じ理想に向けて働くミカエル民族として結ばれているという事は大きな励ましになりました。


シュタイナー教育で教師も環境の一部と言われているように、アントロポゾフィー協会においてアントロポゾフィーを培うというのはアントロポゾフィーがこの世の中で育って行けるよう協会員の一人一人がアントロポゾフィーの環境となる事や、また仲間と一緒に環境を作っていく事で、ゲーテアヌムはその模範となるところなのだろうと思いました。

今回の旅行で再会や新しくお会い出来た方々、特にこの旅行の発案から諸々の事に至るまでお世話をしてくださった吉田和彦さん、日程など細かなところの調整をしてくださった竹下哲生さん、旅行の後半の日程で大変お世話になったヤッヘンス先生、職場の留守を預かってくださった角博子さんと村岡文子さん、そしてずっと寄り添ってくれた小畑奈穂子さん、皆様のお陰でまたとない経験ができました。本当にありがとうございました。




 Text  Akiko Hayashi
Photographs  Yuta Takahashi



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